【徹底解説】
平成生まれのための『新世紀エヴァンゲリオン』史 解説講座

「時に、西暦2015年」。ファーストカットに極太明朝体でこの文字が現れた1995年のTVアニメ放送当時、視聴者は20年後の未来をどのように予測していただろう? まだ時は「世紀末」を迎える前。読者の中には未だ生を受けていなかった人もいるかもしれない。知る人ぞ知る存在だったその作品は、やがて日本中を熱狂の渦に巻き込み、世の中におけるアニメの存在感を変えた。まもなく、西暦2015年。ついに作中の時代設定に追いついたこの約20年間の「新世紀エヴァンゲリオン」の歩みを見てみよう。

主な出来事 年表

1993年夏頃
プロジェクトスタート
本作は『風の谷のナウシカ』などにアニメーターとして参加し、『ふしぎの海のナディア』などを手掛けた庵野秀明監督が自身で企画から立ちあげたもの。企画書には精緻な世界観やストーリー構成が記され、プレゼン資料の枠を超えていた。すでに「人類補完計画」など本作の核心に迫る用語も記載されていたという。
1995年1月
コミック『新世紀エヴァンゲリオン』連載開始
TVアニメ放送から半年以上先行して「少年エース」(角川書店・当時)1995年2月号から連載開始。「エヴァ」のキャラクターデザインを担当した貞本義行が執筆した。あくまでこのマンガは「TVシリーズのコミカライズ作品」であり、原作ではない。そのため大まかなストーリーはTVシリーズに沿っているが、主人公・碇シンジの感情表現やセリフ、登場する使徒の数に違いがあるなど、貞本のアイディアが盛り込まれている。
1995年7月22日・23日
「ガイナ祭'95」にて、TVシリーズ第壱話、第弐話を上映
茨城・潮来ホテルにて開催されたガイナックス(「エヴァ」TVシリーズを制作していたアニメーション制作会社)のファンイベントにて先行公開。このときすでに大きな反応があり、放送開始まで口コミで評判が伝わっていった。
1995年10月4日
『新世紀エヴァンゲリオン』放送開始
テレビ東京系全国6局ネットで放送。従来のロボットアニメとは大きく異なる主役メカ(エヴァンゲリオン初号機)のフォルムや魅力的なキャラクター、ハイクオリティで丹念な情景描写、そして戦闘開始の直前で第壱話が幕切れるというスタイリッシュな演出がアニメファンの間で話題になる。先鋭的なユーザーはパソコン通信を使って議論を交わしていった。しかし後の影響力を考えるとまだまだ限定された中でのブームだったと言える。
1996年3月27日
『新世紀エヴァンゲリオン』放送終了
全話通じてセンセーショナルな演出が多かった本作だが、最終2話分がこの作品の評価、あるいはその後のアニメ界の運命を変えたと言っても過言ではない。人間同士のコミュニケーションや自我を追求するようなメッセージ性の強いテーマは、最終2話で最も色濃く表れた。使徒の脅威にさらされ滅亡寸前だった人類の様子は暗示的に表現され、もっぱら心理学用語や宗教的価値観などを用いて、キャラクターが精神的トラウマを解決する様を描き出すのに特化した。SFストーリーとしての結末を期待した視聴者の予想を大きく覆したこの着地点は賛否が大きく分かれ、放送後も議論を加熱させることになった。TVシリーズの平均視聴率は7.1%。
1996年4月
リメイク版・劇場版 制作発表
第弐拾伍話・最終話をリメイクしてビデオ/LD(レーザーディスク)で発売すること、新作劇場版を制作することが発表される。後に劇場版は別の構成をとる(後述)。
1996年6月
TVシリーズのサウンドトラックがオリコン1位獲得
6月3日付のオリコン週間アルバムチャートで、サウンドトラック「NEON GENESIS EVANGELION III」がアニメ作品としては「銀河鉄道999」以来17年ぶりに第1位を獲得し、各メディアが注目するようになる。収納BOX付きLDソフトが異例の追加生産を行なったり、ブームを受けて放送が開始された地域もあった。
1996年11月
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』発表
翌春にTVシリーズの総集編とリメイク版第25・26話をセットにした完結編『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』が、さらに同年夏には完全新作の劇場版が公開されることが発表された(後に変更)。オリジナルテレホンカード付き前売券の発売開始日には、早朝からファンが行列を作り大きな話題を集めた。
1997年1月~3月
TVシリーズが深夜帯に各地で再放送
劇場版公開直前のこの時期、各局で数話ずつの再放送が行なわれ、深夜帯の放送にもかかわらず高視聴率を獲得した。これがきっかけで深夜帯のテレビアニメの放送に商業的価値が見出され、以降各メーカーが深夜向けアニメの製作に乗り出していった。その流れは現在まで連綿と続いている。
1997年3月15日
「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生」全国ロードショー
「DEATH」編(約72分)と「REBIRTH」編(約28分)で構成される。
前者はTVシリーズ第壱話~第弐拾四話の再構成だが、単なる時系列の圧縮ではなくキャラクターごとに深堀りをした内容で、切れ味の鋭い作品性がより顕になっている。後者はTVシリーズ第弐拾伍話の内容をシナリオから映像までまったく新しい形で表現。第25話「Air」(後述)の前半部分となっている。
1997年7月19日
「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」全国ロードショー
第25話「Air」と第26話「まごころを、君に」合計87分。TVシリーズでは漢字だった話数表記が算用数字に変更されている。心理描写中心だったTVシリーズでの最終2話分とは異なり、NERVとゼーレの激しい攻防戦と物語の完結までを描く。その結末はさらなる賛否両論を巻き起こした。
1997年
第18回日本SF大賞受賞
日本人によるSF作品を、プロである日本SF作家クラブ会員が選考・表彰する「日本SF大賞」をアニメーション作品として初めて受賞。同年には第1回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門優秀賞を、翌年1998年には「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」が第21回日本アカデミー賞話題賞も受賞した。
1998年3月7日
「REVIVAL OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に」全国ロードショー
修正が加えられた「DEATH」編と「Air」、「まごころを、君に」を1本にまとめたもの。庵野監督が当初構想していた形がようやく公開された。全編で160分あるため、途中休憩を挟んで上映された。一連の劇場版は後に公開される「新劇場版」と区別するため「旧劇場版」と呼ばれる。
2003年3月
リニューアルDVDリリース
TVシリーズと劇場版にテレシネ(フィルムをDVDなどに変換する作業のこと)を行ない、画質が向上したデジタル・ニューマスター版。庵野監督監修による5.1ch音響で新たに生まれ変わった。のちにDVD-BOXもリリースされ大ヒットを記録。また、同年7月にはLDジャケット、ポスター、雑誌、グッズ用に描かれた「エヴァ」のイラストを1冊にまとめた「新世紀エヴァンゲリオン画集 DIE STERNE」が発売された。貞本義行やメインアニメーターたちによるさまざまな画稿を200点以上収録している。
2004年12月
遊技機「CR新世紀エヴァンゲリオン」稼働開始
10万台以上が出荷される大ヒット作となり、以降8シリーズを制作。新しい客層を呼び込むと同時に、'90年代とは別の年齢層にも「エヴァ」の知名度が上がる結果となった。
2006年9月
「文化庁メディア芸術100選」アニメ部門第1位選出
文化庁メディア芸術祭10周年を記念し、同庁がインターネットを通じ一般投票を募集した「文化庁メディア芸術100選」の中で、アニメーション部門第1位に輝いた。企画総投票数は約21万票。TVシリーズ放送後10年を経過してもなお、本作が多くのファンの心に残っている作品であることが示された。
2006年9月
「エヴァンゲリオン新劇場版」企画発表
アニメ雑誌「Newtype」10月号で発表。旧劇場版公開から約10年を経て「新たな真実」を描くためリビルド(再構築)し、新作完結編を含む全4部作で構成されることが明らかに。前編(「序」)、中編(「破」)と順に公開し、後編と完結編を同時公開するプランが立てられた。発表に際して庵野監督は「エヴァンゲリオンを知らない人たちが触れやすいよう、劇場用映画として面白さを凝縮し、世界観を再構築し、誰もが楽しめるエンターテイメント映像を目指します。」と所信表明している。
2007年9月1日
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」全国ロードショー
タイトルが旧来の「エヴァンゲリオン」から「ヱヴァンゲリヲン」に改められた。物語の流れで言えばTVシリーズ第壱話から第六話に相当するが、人物描写や設定に変化が現れている。また、制作においてはすべての作画を新たに行ない、デジタル撮影や3DCGを用いて新たな表現に挑戦している。
2009年6月11日
箱根町観光協会が「箱根補完マップ」配布
「エヴァ」の物語の中心となる「第3新東京市」が、神奈川県箱根町周辺をモデルにしていることから制作されたもの。放送当時はアニメの背景舞台を実際に訪れる「聖地巡礼」のファン活動はまだまだ一部のファンの活動にとどまっていたが、デジカメやネットの普及により多くの作品やファンの間で定着した。2010年にはローソン仙石原支店が期間限定で「第3新東京市支店」仕様になるコラボキャンペーンも行なわれた。
2009年6月27日
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」全国ロードショー
「序」の続編。TVシリーズ第八話から第拾九話に相当するが、新キャラクターの真希波・マリ・イラストリアスの登場、見たことのないエヴァンゲリオンや使徒の出現、初めて明かされる新たな謎など、シナリオは完全に刷新された。ヒロインの1人であるアスカの苗字が「惣流」から「式波」になるなど、メインキャラクターにも躊躇なく設定変更が入っている。200万人以上の観客動員数を記録した。
2012年11月17日
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」全国ロードショー
当初発表では4部作のうち「後編」と「完結編」は同時公開される予定だったが、単独で公開。前作までの好評を受け上映館は244スクリーンと大幅に拡大した。ピアノが演奏されるだけの予告編から様々なストーリーが予測されたが、その全てを裏切って物語は「破」の結末から14年後の世界で始まった。起こっていたニアサードインパクト、NERVから離反した組織ヴィレなど、それまで誰も見たことがなかった「エヴァ世界」に、観客は把握に追われる展開となった。かつてTVシリーズがそうであったように、あまりの衝撃に賛否両論が飛び交い、何度も繰り返して鑑賞し1シーン1シーンを考察・議論するファンが現れ、結果382万人を動員する大ヒットとなった。
2013年6月
コミック「新世紀エヴァンゲリオン」連載完結
足かけ18年の長期連載作品となったコミックが、ついに完結。最終話が掲載された「ヤングエース」7月号は完売が続出したため、翌月8月号に異例の再掲載が行なわれた。
2013年8月~
「エヴァンゲリオン展」開催
生原画や設定資料約300点を初公開する、本格的な作品展。東京、福岡、新潟ほか全国9箇所で順次開催されている。
2014年11月20日
コミック「新世紀エヴァンゲリオン」完結第14巻発売
TVシリーズ、および旧劇場版をベースにした展開で物語が完結。とくにTVシリーズ第弐拾話以降に相当する展開の描写は客観的な視点や設定部分の具体的な描写、アニメからフィードバックした内容など、TVシリーズで難解とされた部分が理解しやすい内容になっている。加持リョウジや渚カヲルなどのキャラクターエピソードが追加されており、より彼らの背景が見えてくる。

「人類補完計画」が遂行されていく中、人々はLCLの海の中に飲みこまれていく。
シンジはレイと相対し、彼が下した決断とは――? 累計2500万部突破の大ヒットコミックス、堂々の完結!!

不明
「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」(EVANGELION:3.0+1.0) 「完結編」。公開日、内容とも不明。

(了)

文/日詰明嘉(フリーライター)

参考文献:
『NEWTYPE 100%コレクション 新世紀エヴァンゲリオン』(角川書店)
『スキゾ・エヴァンゲリオン』(太田出版)