怪談実話の大定番
新耳袋 第一夜 現代百物語
KADOKAWA / 角川書店
2002.6
この本のあらすじ
百話を完結させると怪しいことが起こると語り継がれる「百物語」。自ら蒐集した怪異現象の数々によって「百物語」のスタイルを現代によみがえらせ、一大怪談ブームの火付け役となった稀代の怪談実話集!
おすすめコメント
新耳袋(「しんみみぶくろ」と読みます)は、木原浩勝と中山市朗によって調査、収集された、現代の怪談・怪異譚を百物語形式で収録したもの。平たく言えば、いわゆる「本当にあった怖い話」の先駆けであり、記念碑的な作品でして、読書嫌いであった僕が唯一高校生時代に読み漁っていたシリーズです。現実におこる不思議な出来事の多くがそうであるように、本シリーズで紹介される怪談・怪異譚はその謎が解明されることはほとんどありません。その投げっぱなしの終わり方が、リアリティと読者の想像を刺激する余韻を残していて、背筋がぞわりと寒くなります。オーソドックスな怪談集を読みたい方にオススメです。
日本の夏の風物詩
稲川淳二のすごーく怖い話 犬鳴きトンネルの怪
リイド社
この本のあらすじ
日本一の恐怖の語り部・稲川淳二。その独特の口調で語られる身の毛もよだつ恐い話の数々をコミック化! 想像を絶する怪異(ミステリー)……そこに隠された恐怖の真実とは!?
おすすめコメント
夏の風物詩としてすっかり定着した稲川淳二の怖い話。独特の言い回しで語られる恐怖体験の数々は、怖いながらも結末が気になるものばかり。やはり稲川淳二は<語り>が抜群にうまいです!さらに本作はコミックになっているので、ちいさなお子さんと一緒に読むのも楽しいかもしれません。暑い夏におすすめです!
そのギャップに恐怖する!
私の家では何も起こらない
KADOKAWA / メディアファクトリー
2013.2.22
この本のあらすじ
恩田陸の正統派幽霊屋敷物語。エレガントで怖い、静謐な物語。怪談雑誌『幽』に連載していた連作短篇集。待望の文庫化。アップルパイが焼けるキッチンで殺しあった姉妹。近所からから攫ってきた子を解体して主人に食べさせていた料理女。床下の動かない少女の傍らで自殺した殺人鬼の美少年。壁に埋め込まれた死体と思しき物体。……幽霊屋敷に魅了された人々の記憶が奏でる不穏な物語。今、静かに語られるーー。巻末に驚愕のサイドストーリーを収録。待望の文庫化。解説は南條竹則氏(作家)。
おすすめコメント
丘の上に立つ一軒の幽霊屋敷にまつわる10のお話を紡いだ連作短編集です。『私の家では何も起こらない』というタイトルですが、多くの読者の期待どおり(?)、その幽霊屋敷では実にいろいろな奇妙な出来事が起こります。設定は比較的よくある怪談集なのですが、そこはさすが実力派作家の恩田陸。これ見よがしで、露骨な怖がらせはほとんどなく、静謐に淡々と怪奇譚が語られていくのですが、その軽妙とも言える語り口と実際に起こっている出来事の凄惨さとのギャップが非常に怖いです!
切れ味の鋭いオチが心地いい
グロテスクな夜景
光文社
1990.12.20
この本のあらすじ
「宅配幽霊」「わたくし雨」「会社消失」「円盤銀座」「鏡よ鏡」……と、ふしぎな国の幻燈館に入ったように鮮やかなショート・ショートが52点。あなたの眼を奪い、いつの間にか恐怖の世界へ誘い込む。題して『五十二枚の幻燈たね板』。ほかの5編の恐怖短編小説を加えて面白さを倍増した。都筑道夫ファンには手放せない秀作怪談集。
おすすめコメント
著者の都筑道夫は星新一と並ぶショートショートの名手で、優れた掌編集をいくつも世に送り出してきました。本作もそのひとつ。こちらは大阪産経新聞での連載をまとめたもので、様々な読み口の怪談話が52編が収録されています。日本のショートショートの特徴として、切れ味が良い鮮やかなオチが用意されていることが挙げられると思いますが、この52編も読者の予想をことごとく裏切る見事なオチのついたものばかりです。怖い話に興味があるけどちょっと苦手という方でも十分に楽しめる一冊です。
偉大なパイオニアの入門編として
恐怖(1)
小学館
2006.3.30
この本のあらすじ
●あらすじ/みやこ高校の2年生・荒井エミ子は学校新聞の記者。ある日、友人の神無月京子と古本屋を訪れるが、京子は降霊術について書かれた本を手にすると、足早に帰ってしまう。それから数日後、京子たち神秘会のメンバーが降霊術を実行すると聞きつけたエミ子は、同じ新聞部員で憧れの人・夏彦とともにその様子を探りに行くが…(第1話)。
おすすめコメント
「怖い話」といえは、やはり楳図かずお先生は外せないのではないでしょうか。本作は高校生記者である主人公たちの恐怖体験をオムニバス形式で収録したものです。楳図かずおの作品の素晴らしさは大きく二つあります。ひとつは「恐怖」の引き出しの多さです。様々なタイプの恐怖を自在に描き分け、そのどれもが決して似ていないのだから驚きです。そして近年のホラー作品の其処此処に楳図作品の影響を感じることからも、彼のパイオニアとしての存在感が絶大なものであることが伺えます。もうひとつは、絵自体がしっかり怖いということです。作品が持つ禍々しさと狂気を、その絵柄自体にこれほど雄弁に語らせることができる作家は他にいません。本作はオムニバス形式でとても読みやすいので楳図作品入門編としてもオススメの一冊です。
奥深き「怪談」の世界
大人の怪談
KADOKAWA / 角川書店
2009.7.10
この本のあらすじ
怪談はただ単に人を怖がらせる話ではない。語り手の人生が話の中に反映し、それが聞き手の人生と共鳴したとき、初めて新たな恐怖が生まれるのだ。自他共に認める人生の達人が、大人のための怪談の魅力をレクチャー。
おすすめコメント
『新耳袋』の著者でもある木原浩勝と辛酸なめ子が心霊現象や怪談について話しあった異色の対談本です。彼らの心霊体験(これがかなり怖い!)を通して語られる怪談の魅力を聞いていると、怪談とは人生の酸いも甘いも噛み分けた大人こそ真に楽しめるものなのだという気がしてきます。怪談に興味がある方は一読する価値のある良書です。
いかがでしたか。『新耳袋』は個人的な思い入れの強さもあって、多くの方にオススメしたい作品です。さて、次週はまだまだ夏休みということで「本で巡る東京」と題し、東京に行きたくなる本をご紹介します。どうぞお楽しみに!