荒川弘(『銀の匙』)×田中芳樹(『銀河英雄伝説』)
アルスラーン戦記
講談社
2014/4/9
この本のあらすじ
国が燃えている…。世界はどれだけ広いのか? 強国「パルス」の王子・アルスラーンは、いまだ何者でもなく、ただ好奇心にあふれていた。「頼りない」「気弱」「器量不足」と言われたアルスラーンが14歳になった時、遠国の異教徒がパルスへ侵攻……。奈落へと落ちたアルスラーンの運命! 激動の英雄譚、開幕!!
おすすめコメント
これは文句無しに面白い!!魅力的なキャラクター、迫力のある戦闘シーン、普遍的でシリアスなテーマ設定とどれをとっても一級品です。原作ファンの僕としては、原作を忠実に漫画化してくれるのも嬉しいですが、著者独自の解釈が加えられ再構築された新しい『アルスラーン戦記』にも期待してしまいます。原作の角川版ではイラストレーターの天野喜孝(ファイナルファンタジーシリーズのキャラクターデザインでおなじみ)の流麗な挿画が最高でしたが、荒川版は少年漫画的なわかりやすさとワクワク感があって荒川弘版『アルスラーン戦記』の今後が楽しみでなりません。
望月ミネタロウ(『東京怪童』)×山本周五郎(『さぶ』)
ちいさこべえ
小学館
2013/3/29
この本のあらすじ
火事で実家の工務店「大留」が焼け、両親をなくした若棟梁・茂次は、「どんなに時代が変わっても人に大切なものは、人情と意地だぜ」という父・留造の言葉を胸に大留再建を誓う。そこに、身寄りのないお手伝いのりつ、行き場を失った福祉施設の子供達が転がり込んできて……
おすすめコメント
まさか山本周五郎の名作時代小説『ちいさこべ』を『ドラゴンヘッド』『東京怪童』の望月ミネタロウが漫画にするとは!!かなり原作に忠実に作られていますが、舞台は現代に置き換えられているので時代小説が苦手な人にも親しみやすくなっています。原作の素晴らしさは言わずもがなですが、『東京怪童』以降の望月ミネタロウのミニマルな画風が、山本周五郎の人情味があるけどベタベタしない粋で清々しい世界観とあっていて素晴らしい!最近のミネタロウ作品は登場人物のファッションがお洒落で可愛いのも特徴の一つですね。
手塚治虫(『ブラック・ジャック』)×ドストエフスキー(『カラマーゾフの兄弟』)
罪と罰
手塚プロダクション
この本のあらすじ
貧乏学生ラスコルニコフは、金貸しの老婆を殺してしまった!犯した罪の重さに苦しむ彼のまえに、天使のような娼婦ソーニャがあらわれた……。ドストエフスキーの名作文学を、みごとに漫画化した不朽の名作!
おすすめコメント
元祖神コラボといえば手塚治虫版『罪と罰』ですね。原作の長大なストーリーを130ページ程度にまとめるにあたり、決して小さくない改変もいくつかあるので、原作を忠実に漫画化した作品とは言いづらいかもしれませんが、“人間の本質を描く”という点においては、見事に原作の魅力を漫画で表現していると思います。さらに手塚治虫のコミカルなキャラクターたちが、この重厚でシリアスなテーマを取っ付きやすいものにしてくれているのも確かです。ロシア文学のクラシックになかなか手が伸びないという方、まずは手塚版の『罪と罰』からトライしてみてはいかがでしょう。
谷口ジロー(『孤独のグルメ』)×川上弘美(『ニシノユキヒコの恋と冒険』)
センセイの鞄
双葉社
2009/9/1
この本のあらすじ
日本文学界の至宝・川上弘美と日本漫画界の巨匠・谷口ジローのかつてない幸福な出会い!谷崎潤一郎賞受賞の名作を完全漫画化。「遠いようなできごとだ。センセイと過ごした日々は、あわあわと、そして色濃く、流れた。」
おすすめコメント
物語のストーリーラインはもちろん、川上弘美作品が湛える静謐な空気感というか雰囲気までも漫画に反映させた谷口ジローは素晴らしすぎます。やはり谷口ジローという作家は、センセイとツキコさんのように、なんとも形容しづらい微妙な距離感の関係性を描くのが本当に上手い。そして非常に抑制の利いた人物描写ながらも、2人の気持ちの揺れや機微をしっかり描き分けるのは見事というほかありません。川上弘美ファンにも谷口ジローファンにも、諸手を上げてオススメできる幸福なコラボ作品です。
丸尾末広(『少女椿』)×江戸川乱歩(『怪人二十面相』)
パノラマ島綺譚
KADOKAWA / エンターブレイン
2008/2/25
この本のあらすじ
2009年手塚治虫文化賞受賞作! これぞ、猟奇と怪奇とエロスに満ちた、日本漫画の新たな宝モノ! 巨匠・江戸川乱歩の代表作にして最大の問題作を、エロティックでグロテスクな作風で世界的人気を誇る丸尾末広が、奇跡の完全コミック化!
おすすめコメント
江戸川乱歩作品はその映像的なギミックの面白さや発想の独創性から多くの漫画家に愛読され、藤子不二雄や横山光輝、大友克洋などによって漫画化されてきました。本作の著者・丸尾末広も熱心な乱歩読者のひとりなのですが、僕は数ある乱歩作品の漫画化のなかで、この『パノラマ島綺譚』が最高の出来だと思っています。特に終盤に登場するユートピアとしての「パノラマ島」のクラクラくるような圧倒的美しさといったら堪りません。まるで乱歩の世界を漫画化するために存在しているかのような丸尾末広の耽美な絵が十二分に堪能できる一冊です。
小畑健(『DEATH NOTE』)×桜坂洋(『よくわかる現代魔法』)
All You Need Is Kill
集英社
2014/6/19
この本のあらすじ
人類は今、かつてない戦争をしている。敵は「ギタイ」と呼ばれる化物。ジャパンの南方、コトイウシ島で繰り返される戦闘。初年兵であるキリヤ・ケイジと戦場の牝犬と呼ばれるリタ・ヴラタスキは、まだ見ぬ明日を求める戦いに身を投じていく――。
おすすめコメント
『DEATH NOTE』『ヒカルの碁』『バクマン。』などを手がける小畑健の画力の高さは日本の漫画家のなかでもトップクラス。やっぱり漫画にとってが絵がきれいというのは重要ですね。平凡なストーリーでも小畑健の漫画で見せられてたらそれなりに楽しめてしまいそうです。ましてや本作のように、驚異的に面白い作品が原作になっている場合、その破壊力たるや凄まじいものがあります。キャラクターの格好良さ、ギタイの生々しい気持ち悪さ、アクションの迫力も全部文句無し!さらに原作を無理なく全2巻にすっきりとまとめる物語整理力もさすがです。
さいとうたかを(『ゴルゴ13』)×池波 正太郎(『剣客商売』)
ワイド版鬼平犯科帳
リイド社
この本のあらすじ
江戸の平和を守り悪を殺る“鬼”の剣技!!長谷川平蔵が火付盗賊改方長官に就任!! 待望のワイド版シリーズ!天明七年、火付盗賊改方・御頭(長官)をつとめることになった長谷川平蔵。金箔付きの盗賊たちをお縄にしていく彼を、人々は鬼の平蔵と恐れたのであったが……。『血頭の丹兵衛』『老盗の夢』など全4編を収録。
おすすめコメント
本作もまた日本が誇る最強コラボの一つですね。1993年から月刊時代劇漫画雑誌『コミック乱』にて20年以上にわたり連載されている長寿作品で、いかに多くのファンから愛されているかわかります。原作には画にはしにくいシーンが多くて漫画化は難しいと語っているさいとうたかをですが、それでも原作の世界観は損なわず、漫画的にきっちり盛り上げる職人的な手腕はさすが。それにしても『ゴルゴ13』のデューク東郷しかり、『鬼平犯科帳』の長谷川平蔵しかり、さいとうたかをは自身の美学をつらぬく厳格で渋い男を描かせたらピカイチですね!
外薗昌也(『鬼畜島』)×首藤瓜於(『刑事の墓場』)
脳男
講談社
2013/1/30
この本のあらすじ
連続爆弾事件の容疑者として逮捕された、謎の男・鈴木一郎(すずき・いちろう)。警視庁から、鈴木一郎の精神鑑定を依頼された精神科医・鷲谷真梨子(わしや・まりこ)は、彼こそが、心を持たない、脳だけの男、「脳男」であると知る。そして、脳男が、凶悪犯罪者を次々と殺し続けていることも! 神か? 悪魔か? 裁きの時が、近づく!
おすすめコメント
2000年に江戸川乱歩賞を受賞した首藤瓜於のハードなサイコサスペンスをうまくコンパクトに漫画化していると思います。ただ1巻にまとめるにあたり、オミットされているエピソードもそれなりにあります。それゆえにわかりやすく取っ付きやすいのがこの漫画版の魅力なのですが、原作にはより深い描き込みをされているので、原作と漫画版をあわせて読むのが一番オススメです!
どれも信じられないくらい豪華なコラボレーションですね。僕の個人的な一押しは『ちいさこべえ』です。「どんなに時代が変わっても人に大切なものは、人情と意地だぜ」という父・留造のセリフにジンときます。どうぞお気に入りのコラボ作品を探してみて下さい。