#あの人に気になるあのこと聞いてみた

豪華役者陣が集結

傑作警察小説『64(ロクヨン)』が骨太傑作映画に!

#あの人に気になるあのこと聞いてみた 豪華役者陣が集結
傑作警察小説『64(ロクヨン)』が骨太傑作映画に!

発表されるや否や高く評価された横山秀夫の傑作警察小説『64(ロクヨン)』が、待望の映画化を果たした。しかもベテランから若手まで主役級の役者陣がそろった文字通りのオールスター映画に仕上がっている。
久々の共演を実現させた佐藤浩市と三浦友和にじっくりと映画『64-ロクヨン-』の魅力を聞いた他、横山秀夫作品や近年映画化されたミステリー小説の傑作も紹介したので、本特集で期待を高めてから劇場に向かってほしい!

PROFILE

佐藤浩市(さとうこういち)

1960年12月10日、東京都出身。1980年にドラマ『続・続 事件 月の景色』で俳優デビュー。『忠臣蔵外伝 四谷怪談』でアカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。近年の主な出演作は『のぼうの城』『許されざる者』『バンクーバーの朝日』『愛を積むひと』『HERO』『アンフェア the end』『起終点駅 ターミナル』など。

三浦友和(みうらともかず)

1952年1月28日、山梨県出身。1972年にドラマ『シークレット部隊』で俳優デビュー。青春スターとして一世を風靡し、現在は幅広い役柄をこなす実力派俳優の地位を確立している。2012年には紫綬褒章を受賞。近年の主な出演作は『アウトレイジ』『ストロベリーナイト』『救いたい』など。公開待機作としては本年夏公開の『葛城事件』がある。

映画『64-ロクヨン-』の原作小説はこちら!

64(ロクヨン)

横山秀夫

文藝春秋

数々の警察小説の傑作を手がけてきた横山秀夫が放つ上下巻の大作ミステリーで、2016年3月現在、累計発行部数は130万部を突破している。2012年に『週刊文春』のミステリーベスト10で第1位、2013年に『このミステリーがすごい!』で第1位、2013年に第10回本屋大賞第2位と、さまざまなランキングで高い評価を獲得。2015年にはNHKでドラマ化された。

だれもが感情移入できるストーリー

──まず、映画『64-ロクヨン-』という作品に対する第一印象を教えていただけますでしょうか。

三浦(佐藤に)お願いしますよ(笑)。

佐藤(笑)。最初に小説を読んだときに、たいへん横山(秀夫)さんらしいなあと。ちゃんと横山さんのイズムというか、面白さがある。警察ものだけど刑事部の刑事が主役ではないし、いつものように組織論があり、中央と地方の対立があり。でも、そうした背景や警察の組織のことがわからなくても、読んだ人は自分にフィードバックできて、社会のどこかの組織に属している人間だったら非常によくわかる構成になっていると思いました。たぶん、どなたが読んでも感情移入できるだろうな、と。

──佐藤さんが演じた三上義信、三浦さんが演じた松岡勝俊。演じる上で、どういったことを意識なさったのでしょうか?

佐藤原作にあった三上の娘の醜形恐怖症という部分を少し変えているので、そうした家庭の部分、三上と娘の関係性のディティールをどう持っていくか。刑事であることの異物感が家の中にも深くあったことが、娘との関係を崩壊させたひとつの原因だったのかなと思いながら進めていきましたね。

三浦松岡は三上にとってのキーマンみたいなところがあるのかなと。迷宮入りした64の捜査現場にいたという三上との共通点があった松岡は64に対して迷いもあったけれど、そろそろ定年だからということで行動は起こさないでいた。でも、ふと我を省みて三上たちの側に行く。そういう立場だと理解しました。

──さまざまな人物が登場しますが、松岡は三上に対しての距離感が微妙ですよね。

三浦見ている人が「なんだろ、この人」ってならなきゃいいと思いましたね(笑)。

──役者さんは組織に属するというより、個人としての立場が大きいんじゃないかとも思うんですが、今回のように組織が重要な要素となる作品で組織の中の人を演じるとき、どういったことを心がけていらっしゃるんでしょうか?

佐藤おっしゃったように勤め人の経験がないものですから、演じる人物がやる仕事などのインフォメーションはできるだけ入れて想像するしかないということですよね。でも、おかげさまで35年もこの仕事をやっていると、仕組みの中にいる自分、そこからはみ出す自分、はみ出せない自分が見えてくるので、そうしたことも演技で活かせると考えています。

──通常の刑事ものとは違う警察の姿が描かれます。

佐藤警察というのは、日本でいちばん大きな組織で、皆さんが知っているようで知らない。地方の警察と中央の警察、警務部と刑事部などの関係も近いようで遠い。言葉にしない中でも、見る側になんとなくそこら辺の背景が伝わるように演じています。

──三浦さんは組織人を演じる上で心がけていらっしゃることは?

三浦俳優の立場から言えば、ひとつの作品には大勢の人が関わっていて、それも組織は組織ですから。最終的に映像を見たときに、自分が変に浮いているのはイヤだなということは思いながらやっています。できあがったものを見て、「ああ、そんなに出しゃばったこともしてなくてよかった」というのが正直なところですね。

久しぶりだった佐藤と三浦の共演

──今回、豪華なキャストが大きな話題となっていますが、おふたりが久しぶりに共演なさったご感想は?

佐藤(三浦に)久しぶりですよね。

三浦どのぐらいぶりなんだろうね。

佐藤かなり時間を置いていますね。テレビだと『みんな大好き!』っていう日テレのドラマ(※1983年放送の三浦の主演ドラマ)がありましたね。

三浦20代だよね。

佐藤僕が24ぐらいです。そこからほとんど共演はないですよね。三浦さんはいい意味で老けないですね。ご自身の立ち位置といろんなことを俯瞰しながら、お芝居や映画というものに関わっていらっしゃる。『64』にはいろんな方々が出てらっしゃるんですが、やっぱり三浦さんと久々に共演するんだという楽しみは他の方とは違うものがありましたね。松岡を三浦さんにやっていただけることも心強かったです。

三浦そんなことを言っていただけると、本当に嬉しいですね。今回、映画で活躍している人たちがたくさん出演していて。そういう人たちは、なんでもかんでも出るってもんじゃないんです。偉そうに言わせてもらうなら、俳優がやるかやらないか決めるときに何を見るかって言うと、脚本と監督と主演俳優だと思うんですよ。脚本がよくても「主演がこの人だとやだ」っていうのが本当にあるんですよ。

佐藤(苦笑)。

三浦逆に「この人が主演なら何の役でもいいから出たい」というのもあるし、「この監督なら1カットでもいいから呼んでくれ」というパターンもある。今回はたぶん俳優の半分ぐらいが「佐藤浩市だからやる」っていうことだったんじゃないですか。それで成立しているキャストだと思うんですけど、僕もその中のひとりですよ。

佐藤恐縮です(深々とおじぎ)。

三浦お互いにほめちぎってね(笑)。

──おふたりの共演シーンには緊張感とすごみがありました。

三浦俳優同士って波長が合うか合わないかが大事。「この人と共演したい」と熱望していても、どうしてもダメなときってあるんですよ。でも、この映画『64-ロクヨン-』ではそういうことは全くなくて。すごく心地いい現場でしたね。ふたりで対峙した瞬間、「ああ、映画の撮影現場だな」ということを感じました。

──撮影前におふたりで「こうしよう」みたいな話し合いはなさったんですか?

三浦それぞれ監督とは話しましたけど、ふたりではまったく話してないですね。

佐藤後編の捜査指揮車の中、実は台本では何十ページもあって、頭を抱えるぐらい長いんですよ。でも、そう見えなかったでしょ。やっぱり三浦さんとご一緒することで、あの狭い空間でのやりとりでの緊迫感が生まれて、長いものに見えなかった。

三浦(唐突に思い出して)『あ、春』(※1998年の佐藤の主演映画。監督は相米慎二。三浦も出演している)の共演があったね。

佐藤あ、そうか。相米さんのやつだと『台風クラブ』(※1985年の映画。三浦は教師役で出演)にも実は僕も1カット出ているんだけど、誰だかどこだかわからないとこに出ていて、三浦さんとの絡みはないし。

三浦名前は出ていたよね。

佐藤「どこに出てた?」ってみんな言うんだけど、「台風来るから早く帰れ」って走り回っている先生が僕なんですよ。相米組だから寄りも撮らないから、ただ奥のほうで「お前ら帰れーっ!」って言っているエキストラのおっさんみたいで(笑)。

──相米組という共通点がおふたりにはあるんですね。

佐藤三浦さんも相米さんを通り抜けているという部分で、同窓とは言わないけど、そういう感覚はありますね。

三浦個人的なことだけど、相米組でなかったら俳優は続けてられなかっただろうねというぐらいの存在ですから。相米組を経験している人間って変な連帯感があるんです、不思議なぐらい。(相米を)偲ぶ会とかやると、10何年経ってもスタッフ、キャストと集まるんですよ。

原作とは異なるラストの展開

──映画『64-ロクヨン-』に話を戻させていただきます。佐藤さんは「ここまで身を削ったのは久々」というようなことをおっしゃっていますよね。

佐藤テレビと同時進行だったっていうのもあったし、今回の映画『64-ロクヨン-』に関しては妙なプレッシャーもあったんですよ。映画の主人公って、いろんな事象が自分のまわりで起きて巻き込まれていくから、往々にして受け身なんですよ。今回はそうしたいろんなことが起きる中でも、ある一点に向かっては走っていきながら攻め続けないといけない。撮影現場でも、若い人から先輩までいろんな方々と、戦いではないんだけどつばぜり合いをする部分がある。何か終わっても次が待っているんです。普通の映画のスケジュールって山場を抜けるとちょっとホッとできるんだけど、今回はそれがなかったですからね。そういう意味でのしんどさですよね。

──佐藤さんの作品としては泣くシーンが多いようにも感じました。

佐藤多いですね。エモーショナルですね。ただ、記者団とのやりとりのところは原作にくらべると少し抑えた方向にしているんです。テストをやってみると、ガアッと泣くのではなく、一歩手前でぐっと踏んばったほうが伝わるんじゃないかっていうのもあったので。ただ、泣いているところもけっこうありますね、意外に。疲れました(笑)。

──今おっしゃったように原作からのアレンジもあります。特にラストの展開は原作と異なる内容になっていますね。

佐藤「そうしませんか」っていうのが最初の段階から僕もふくめて全員の総意だったんですよ。前後編でなく1本の映画とするなら、原作の終わり方でもいいと思うんです。ただ、前後編という形にするなら、映画としてのケツのとり方がないといかがなものでしょうか、と。それでみんなで考えて原作と異なるところにラストを持ってくるやり方にしたんです。コンサバティブなファンの方々にはネット上などでいろいろと言われることでしょうけど、そこは覚悟の上であえてそうさせていただくべきじゃないかと。僕はこれに関しては納得しています。

三浦ラストだけじゃなくて、ある程度オリジナルにしていかないと映画にはならないですよね。賛否はもちろんあるでしょうけど、後半をあの展開にするのは、原作を読んだ人もNHKのドラマ(※ピエール瀧主演で2015年に放送されたドラマ版『64』)を見た人も、違う展開が見られるので期待感としては、とてもいいんじゃないですか。

おふたりの日常の読書は?

──ところで、おふたりは『64(ロクヨン)』以外の横山秀夫さんの作品はお読みになってるんでしょうか?

三浦代表作は全部読んでいます。『クライマーズ・ハイ』『出口のない海』。『出口のない海』の映画には、ちょっと出ているんです、(市川)海老蔵君のお父さん役で。

佐藤『半落ち』。あと短編もいいですよね。

三浦『第三の時効』『震度0』。

佐藤俺も『震度0』好きだな。

──横山作品のどういったところに魅力を感じていらっしゃいますか?

三浦横山さんが元記者なだけあって、警察の記者クラブの話もよく出てくるんだけど、あそこまで食い込んで書ける方って、やっぱり横山さんしかいない。警察官は他の小説だとヒーローになりがちなんだけど、横山さんの作品ではヒーローじゃないんです。ある意味ヒーローなんだけど、普通のヒーローとは違う、心から応援したくなる人間味のある人物なんですよね。

──佐藤さんは『逆転の夏』、ドラマ版『クライマーズ・ハイ』など、これまでも横山作品の映像化に関わっていらっしゃいますね。佐藤さんが考える横山作品の魅力とは?

佐藤知らない世界が、さも自分がそこにいるかのような臨場感をもって伝わってきますよね。例えば『震度0』もそうだけど、危機に瀕している組織に自分がいるような錯覚を覚えさせる面白さがありますよ。すごいエンターテイメントの作家だと思いますね。

──横山秀夫さんの作品以外で、最近読んで印象に残っている本があれば教えていただけないでしょうか。

三浦『Aではない君と』(薬丸岳の小説)がよかったですね。

佐藤加害者少年の父親の話でしたっけ?

三浦そうそうそう。自分の息子が逮捕されてしまって、でも息子のことを信じたいっていう親父の話です。タイトルの「A」っていうのは、「少年A」のAなんです。

──佐藤さんはいかがですか?

佐藤『起終点駅(ターミナル)』の桜木(紫乃)さんの新刊(『霧 ウラル』)を贈ってもらったんだけど、面白かったですね。昭和の北海道の女性たちの話で。僕は自分が男なせいで、女性ものってあまり読まないんだけど、非常に面白かったです。

──おふたりは本をどういうときにお読みになるんですか?

三浦僕は寝る前に必ず読みますね。

──習慣なんですね。

三浦そうそう。面白いと寝付けなくなるし、翌朝はどこまで読んだかわからなくなったりするけど(笑)。

佐藤僕は圧倒的に移動中が多いですね。飛行機だろうと新幹線だろうと移動で眠れない人なんですよ。だから活字に頼るしかないんですね。ただ、目が悪くなってから本を開く機会は少なくなりましたね。

──電子書籍でお読みになったりはしないですか? 文字を大きくできるんで、視力が弱いかたにもオススメなんですよ。

佐藤どうしても紙なんですよ。読んでいる感じもいいし、ページをめくるときの紙のすべる音が好きなんで。

三浦この世代には難しいよね(笑)。興味のありそうなことが帯に書かれた本を書店で買ってきて、つまんなかったときの悔しさもあったりするけど、本を手元に残しておきたい。

佐藤わかります。結局、LPがCDになったときの感覚ですよね。LPはジャケットも含めて、それがひとつの財産で、LPを保存所有するっていう所有意識があったけど、CDだとそれがない。書籍もそんな所有意識がある気がします。ごめんね、電子書籍のサイトでこんな話して(笑)。

──最後に改めて映画『64-ロクヨン-』の見どころを教えてください。

佐藤予備知識がなくても「えっ、すごい、なんだ、この話」と思いながらどんどんハマっていく。そのハマり感が雪だるま式にふくらんでいくところが、この映画の最たる魅力です。原作を知っていても知らなくても楽しめる、そういう作品だと思いますよ。

三浦エンターテイメントとしての見応えがある作品なので、ぜひ映画館で見ていただきたいですね。

取材・文/武富元太郎
撮影/吉井明

佐藤浩市さんと三浦友和さんのサイン入り
映画『64-ロクヨン-』パンフレットを、
抽選で2名の方へプレゼント!!

応募期間:2016年4月28日~2016年5月26日

応募は終了いたしました。
たくさんのご応募ありがとうございました!

映画『64-ロクヨン-』の原作小説はこちら!

64(ロクヨン)

横山秀夫

文藝春秋

数々の警察小説の傑作を手がけてきた横山秀夫が放つ上下巻の大作ミステリーで、2016年3月現在、累計発行部数は130万部を突破している。2012年に『週刊文春』のミステリーベスト10で第1位、2013年に『このミステリーがすごい!』で第1位、2013年に第10回本屋大賞第2位と、さまざまなランキングで高い評価を獲得。2015年にはNHKでドラマ化された。

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