#あの人に気になるあのこと聞いてみた

新感覚時代劇ドラマが劇場版でついに完結

信長協奏曲のぶながコンツェルト』の最終楽章が始まる

#あの人に気になるあのこと聞いてみた 新感覚時代劇ドラマが劇場版でついに完結
信長協奏曲のぶながコンツェルト』の最終楽章が始まる

石井あゆみの同名人気漫画を実写映像化して大きな人気を獲得したテレビドラマ『信長協奏曲』。戦国時代にタイムスリップして織田信長として生きることになった高校生サブローの活躍を描く本作。そのストーリーを締めくくる待望の劇場版が遂に公開される。今回の特集では、主演・小栗旬のインタビューや関連作品の紹介などを通して、映画と原作『信長協奏曲』の魅力に迫りたい。

PROFILE

小栗旬(おぐりしゅん)

1982年12月26日生まれ、東京都出身。主な主演映画は『キサラギ』『クローズZERO』『宇宙兄弟』など。本作以外の2016年の出演映画としては『テラフォーマーズ』『ミュージアム』などがある。

公式サイト http://www.tristone.co.jp/oguri/

サブローは大きな矛盾とずっと戦っている

──ドラマから始まったサブローの物語の結末を描く劇場版がいよいよ公開となります。

小栗ドラマから映画とみんなでずっと戦ってきて、完成した映画を見たら、サブローにとってすごく長い旅が終わって、彼に対して「お疲れ様でした」みたいな感じに僕自身も思えたのでよかったなと思いましたね。

──そのサブローを演じる上で一番大切になさったものは?

小栗サブローはかなりの理想論を言い続けてきた人なので、彼がその理想を本当に信じてると見えない限り、みんながサブローについていくのは難しいと思うんですよ。彼はいつか必ず平和な時代がくるというのを本当に純粋に信じ続けているけど、そこに矛盾があって。

──矛盾ですか。

小栗戦って誰かを傷つけなければ、理想の平和な未来を手に入れられない。今回の映画では、それを知ったサブローが戦わなければいけないということを選択して、その大きな矛盾とずっと戦っていくんです。その矛盾との戦いで、いつも傷ついていくサブローがいるという意識は大事にしましたね。

──サブローと小栗さんとで共通点はありますか?

小栗自分自身のことをよくわかってないから、役と自分のどこが似てるかあんまりピンと来てないんですけど(笑)。ただ、演じてるのは結局自分で、演じた人物が全然自分じゃないって言えるほど芝居もうまくないと思うし、自分が演じてるからこそ自分の中にある何かが役を通して出てる瞬間が確実にあると思うので、きっと共通点みたいなものはあるかと思いますね。

──一人二役で本当の織田信長である明智光秀も演じました。ひとつの作品の中で1人の俳優が信長と光秀を演じるという例は今までなかったんじゃないでしょうか?

小栗ただ、サブローの信長は自分たちが知ってる信長からあまりにかけ離れてるので、「俺、今、信長も明智もやってるんだ」っていう感じはそんなになかったですね。

──では、原作のサブローと光秀を意識なさったんですか?

小栗ドラマのサブローと光秀は原作から離れていった部分もあるので、それもあんまり考えずでしたね。ドラマから映画と自分たちで作ってきたサブローってキャラと、僕たちが作ってきた世界観の中にいるミッチー=光秀ということでやってきたって感じですかね。

──先ほどはサブローについてお聞きましたが、光秀を演じる上で気をつけたことは何でしょうか?

小栗原作のほうでは、サブローと光秀はお互いに助け合って、本当に協奏曲のような関係で、入れ替わってこっちがこっちになってみたりという時間を過ごしてきてるんですけど、僕たちがドラマで作ってきた光秀は、あんまりサブローのことを助けてないんですね。嫉妬に駆られた人ってことでずっと来てしまったので、この人が本能寺を迎えるためにはどうすればいいんだろうっていうのは難しいところでしたね。そこは、いろいろと監督たちと相談しながら作っていきました。

現場では何度もディスカッションを重ねた

──今おっしゃったように現場でのディスカッションはたくさん行ったそうですね。その中でも特にポイントとなったところは?

小栗けっこう色んなことを話したんですけど、一番話し合ったのはサブローが戦地で最前線に立つところですね。ドラマではサブローは一度も戦っていないんです。でも、映画でも最後までそうなってしまうと、結局は自分の手は出さないで理想論だけを掲げてる人になってしまうじゃないですか。ドラマの最後に浅井長政を介錯する形でサブローは初めて人を斬って、改めてこの戦国という場所で生きなければいけないということを覚悟するんですけど、そのサブローがドラマの後を描く映画で戦わなかったら、お客さんもサブローの理想論に全然ついていけないですよね。なので、そこは何度も話し合いを重ねました。

──それでサブローが合戦の場に出るようになったわけですね。

小栗あとは光秀と秀吉の描き方に関しても、監督と山田孝之の3人でかなり話し合いましたね。監督もずっと台本に直しを入れてくれました。

──今回、原作とは違う映画オリジナルのエンディングが描かれます。

小栗あれだけ壮絶な経験をしたサブローがどうなるんだろうって考えて、僕とスタイリングをやってる澤田石(和寛)の中で勝手に設定も作ったりしたんですよ。あのシーンだけでそれが伝わるものでもないんですけど(笑)。

──裏設定ということですね。『信長協奏曲』はバラエティ豊かなキャストも魅力だと思います。

小栗ドラマのときはみんな湾岸スタジオ(※お台場にあるフジテレビのスタジオ)にいることが多くて、そこで空気ができ上がっていたから、ドラマから映画まで撮影期間が3~4ヶ月空いたんですけど、映画にもすーっと入っていけましたね。今回、家臣のみんなと会う時間は少なくて一緒にいたのは5日ぐらいだったんですけど、山田(孝之)君とは一緒にいる時間がすごく多くて、ほぼ毎日一緒にお酒を飲んでました。

──帰蝶とサブローのやりとりはドラマのときからファンに好評でした。帰蝶役の柴咲コウさんとはドラマのときが初共演ですよね。

小栗そうです。コウちゃんは、たぶん皆さんがイメージしている柴咲コウさんとそんなに変わらないというか。本当に凛として、サバサバとしていて。今回の作品で言うと、抱きしめ合ったりするカットでは、コウちゃんの顔を僕は見てないので、できあがった映像で初めて見たんですけど、こんなにいい顔してくれてたんだな、ありがたいなと思いました。

──サブローと帰蝶のドラマに涙する観客の方も多いと思います。

小栗プラトニックですからね。この間、映画を見た別の作品のプロデューサーから電話がかかってきたんですけど、2人のような関係は現代でやろうとしたら絶対に難しいって言われましたね。「なんでキスしないんだ」とか「もうちょっと2人の距離が近いだろう」ってことを。

──舞台が現代だと、そう言われるかもしれませんね。

小栗サブローと帰蝶は、送り出した人が帰ってこないかもしれないって、なかなか現代だとない状況の中で「行ってこい」って言える関係ですよね。そのプロデューサーとは「戦国時代ってラブストーリーを作るのになかなかいいのかもね」って話をしました。

もし戦国時代にタイムスリップしたら?

──その戦国時代にサブローのように小栗さんがタイムスリップしたら?

小栗3日で死ぬと思います(即答)。たぶん、『信長協奏曲』みたいに優しくなかったと思うんですよ。なかなかの不審者ですし(笑)、間違いなく捕らえられるでしょうね。時代劇と違って、500年前の日本語って僕らが聞いてもわからないんじゃないかとも思うんですよ。だからアメリカに来ちゃってるような状況だと思うんです。向こうは英語でしゃべってきてるのに、こっちは日本語でしゃべってるような感じで、しゃべり続けてるうちに首斬られちゃってると思うんですね(笑)。たぶん必死に逃げようとしても斬られて、従ったとしても斬られ、何もしなくても斬られると思うから(笑)。人に会わなくても、やっぱりどうにもできなくて餓死ですね(笑)。

──どう転んでも死ぬんですね(笑)。

小栗僕、タイムスリップということに関しては超現実的なんですよ(笑)。500年前の日本人ってあまりに違う人間だと思うんですね。冗談通じないだろうし……通じんのかなあ。ギリギリ写真があったころの幕末ぐらいの日本人を見ても目が強すぎるなって思うんですよ。本当に刃物で人を傷つけることを知ってる、血を目の前で見てる、そういうことがないと人ってこういう目にならないよなっていう感じなんです。ただ、もしかするとサブローのように当時の人たちと仲間になれたら、今とは全然違う生き方ができるようになるかもしれないですね。でも、戦国時代で名を馳せようかって考えると……怖いなって思っちゃいますね(笑)。

──サブローと光秀の関係についての話題のときに原作に言及なさってましたが、原作の感想を教えていただけますか?

小栗原作も本当に面白いと思います。

──原作とドラマ・映画ではサブローの人物像が少し違いますね。

小栗原作のサブローは運動神経がいいんだってことでいきなり戦えちゃうんですね。

──原作だとサブローはいきなり馬を乗りこなして、立ち乗りまでしますから。

小栗僕らのサブローは戦国にやってきていきなり戦えるわけもないし、最初は馬にも乗れるわけがないという形でやってきましたけど、あれはあれで間違いじゃないと思いますね。

──たしかに、ドラマ・映画版のサブローのほうが感情移入しやすいように感じます。共通点で言うと、原作とドラマ・映画版のサブローはどちらも歴史の知識が弱いですね。

小栗原作のサブローは歴史を変えちゃいけないって言って教科書をもとに行動するし、本能寺の変のことを知ってはいるけれど、明智光秀のことは知らないんですよね。

──織田信長を倒したのは「たしか“あ”がつく人」みたいなぼんやりとした知識しかありません。

小栗信長を殺すのは明智光秀ではないという考えで生きているのが面白い点だと思います。さっきも言ったように原作ではサブローと光秀が二人三脚のような形で本当に協奏曲しながら進んでいくから、読んでる側もこの2人がどういう形で本能寺を迎えるのかなって思うんですよね。その辺のワクワクはすごく強いですよね。

──『信長協奏曲』以外で最近お気に入りの漫画などはありますか?

小栗けっこう熱くなったのは『GIANT KILLING』(漫画:ツジトモ、原案:綱本将也)ですね。

──サッカー漫画ですね。どういうところに魅力を感じたんですか?

小栗まず、サッカー監督を主人公にした話ってそんなになかったじゃないですか。それから挫折もあるんですけど、痛快なんですよね。どうして戦略が成立するのかってしっかり説明してくれた上で彼らは勝つので、読んでて気持ちがいいんです。主人公チームがそう簡単に勝たせてもらえなかったりもするし、その辺も面白いなと思いますね。

──小栗さんと言えば『荒川アンダー ザ ブリッジ』(漫画:中村光)の映像化を編集部に直談判なさったというエピソードもありますが、今、映像化を考えているような作品はありますか?

小栗自分が読んでた漫画はだいたい映像化されていて、逆に言うと枯渇状態だよなあとも思いますね。漫画原作の作品もだいぶ出切っちゃってるし、今は面白いオリジナルのストーリーをいい作家さんやいい脚本家さんと見つけられたらいいなという段階にいる感じです。

取材・文 / 武富元太郎
撮影 / 森鷹博

映画『信長協奏曲』の原作コミックはこちら!

信長協奏曲

石井あゆみ

小学館

作者の石井あゆみにとって初連載作品ながら第57回小学館漫画賞少年向け部門受賞という高い評価も獲得した人気漫画。戦国時代にタイムスリップして織田信長として生きることになった高校生サブローの活躍を描く。一度読み出すとぐいぐい引き込まれていくストーリーや、ドラマ・映画版とは一味違うサブローのひょうひょうとしたキャラクターも魅力的。現在、月刊誌『ゲッサン』にて好評連載中。

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